2019.9.30
モザイク柄の世界で
こんにちは、杉山です。
台風シーズンを経て、すっかり秋の様相ですね。
と言いながら私は今、気温30度超えのシンガポールで汗を引かせるためにカフェに駆け込み、この記事を書いています。
ご存知の通り、シンガポールは様々な民族が入り交じった多文化国家です。
公用語は英語の他、中国語、マレー語、タミル語と4つもあり、中国語の影響を受けた現地の英語はシングリッシュと称されたりもします。
そんなモザイクのように複雑に文化が入り乱れたこの国で感じたことを書き連ねてみたいと思います。
文化の混ざり合い
シンガポールはマリーナ・ベイ・サンズのような近未来的都市とカトンのカラフルにペインティングされた家並(ショップハウスと呼ばれる)に代表されるプラナカン文化など、様々な面が楽しめる都市国家だ。
その東京都のわずか1/3に過ぎない狭い国土の中で、中国系、マレー系、インド系など様々な文化がせめぎ合っている。
民族街もチャイナタウン、リトルインディア、アラブストリートなどが近接しており、数駅で行ける世界旅行、といった感覚だ。
街の看板には英語、中国語、マレー語が併記されており、何か一つ伝えるにも大変だなと思ったり。
とはいえ、これは日本でも普通に見られる光景ではないだろうか。
駅の案内は日本語、英語、中国語、韓国語で表記され、街角ではドラッグストアのお姉さんが中国語で呼び込みをする。
日本の場合はインバウンド対策として、という理由も多分にあるが、インターネットの登場により世界中の情報に手軽にアクセスできるようになり、世界がより近く、混ざり合ってきているのは間違いないだろう。
異文化や自分とは異なるモノへの興味
文化が混ざり合うことで、同じコンテクスト(文脈)での生活を根底とした画一的なコミュニケーションが成り立たなくなってきている。
本能的に、異文化への理解をしていかなければ生き残れないという思いが潜在的に生まれ始めているのではないだろうか。
知らず知らずのうちに異なる背景を持つ物語に僕達は興味を持ち始めている。
MARVELシリーズではそれぞれ世界観の異なるヒーローの物語がそれぞれスピンオフで描かれる。
スピンオフ作品を観ていないと本編が理解できないこともザラだ。
漫画のワンピースでもそれぞれの登場人物にバックストーリーが細かく用意されていたり、日本のアニメーションや邦画などでも、それぞれ異なった背景をもつ登場人物のバックストーリーが細やかに描写される作品が人気を博し、増えてきている気がする。
これは同じ日本の中にいても、自分とは違う価値観を持った他人を理解したい、という心理の表れではないだろうか。
多層化する個人
前段で同じコンテクストの中でのコミュニケーションがままならなくなってきたと述べたが、それは単なる外国人とのコミュニケーションに留まらず、同じ日本人であっても異なるコンテクストを持つようになってきているし、ひいては同じ一人の人の中でも複数のコンテクストを多重人格のように使い分けるようになってきている。
例えば身近な例で挙げれば、Twitterなどでも個人のメインアカウントに加え、仕事用のアカウント、好きな趣味、推しのアイドルetc…の事を呟くための専用アカウントを複数使い分けている人も多いだろう。
同じ一人の人の中で、シンガポールの街並みのように複数の文化とコンテクストがモザイク的に同居しているのだ。
これは個々人がインターネットという圧縮された小さな世界で多種多様な文化に日々触れ刺激を受けることで生まれた世界だ。
言い換えれば多様な人生を、それぞれが気ままに同時並行で複数選択し、楽しめるようになった豊かな時代とも言える。
多文化時代のマーケティング
ではこのようなバラバラでモザイク的なコンテクストを持つ生活者に対して、どのようなマーケティングをしていくべきなのだろうか。
一昔前であれば、いわゆるF1層(20〜34歳女性)、M2層(35〜49歳男性)といった年齢・性別のターゲティングで、何となくこんな生活をしている人達、という選別が出来ていたのかもしれないが、前述の通り、個々人の趣味嗜好がこれだけ多種多様になってくるとこのようなセグメントはあまり意味を持たない。
とはいえ、その小さなセグメントの塊(トライブ)をターゲティングしていってもボリュームがとれないし、一つ一つ追っていくのはキリがない作業となる。
また近年ではSNSが普及したことにより、マーケティングは企業主導の時代から個人が好きな物を選択する時代に変わってきている。
そのため、企業が狙った個人(またはトライブ)に向けて情報発信するという考え方から、様々な趣味嗜好を持つ個人から選ばれる企業になる、という考え方にシフトする必要がある。
ではどうすれば選ばれる企業になれるのか。
それは、各企業が持つストーリーやリアルな活動をオープンに発信し、作られた1枚絵ではなく多面的な存在として魅力を伝え、共感者とコミュニケーションしていくことに他ならない。
幸いそのためのツールは整っている。
後はそれを使いこなし、一つ一つ丁寧なコミュニケーションを積み上げていくだけだ。
僕らSTORYも、引き続き一社でも多くの魅力的な企業が、このモザイク柄の世界で成功できるよう支援していきたい。