2023.5.30
介護系レンタルサービス案件の統計を活用した改善事例

うっちーです!今回は統計を活用した改善事例のご紹介をさせていただきます。
現在担当している車椅子や福祉車両などの介護系レンタルサービスの案件があります。
こちらの案件で曜日とコンバージョン獲得数の間に相関関係があるのではないか気になったためリサーチ致しました。
その気付きから改善提案に繋がった事例があるのでご紹介したいと思います。
<案件概要の整理>
まずは介護系レンタルサービス案件の概要から説明させて頂きます。
ペルソナ(車椅子の例)
ペルソナとはサービスの典型的なユーザー像のことを指します。
介護系レンタルサービスで主に「車椅子 レンタル」などをターゲットとするユーザー層の特徴は以下の通りです。
・50歳くらいの大阪市在住の女性Aさん
・母親は骨折し救急外科に入院していたが現在は自宅療養でリハビリを継続中
・80歳の母親の自立した生活の支援のため介護レンタルサービスの利用を検討中
・趣味は神社・お寺巡りなどで母親とも休日に出かける
ストーリーマップ(車椅子の例)
弊社で使用したストーリーマップ(カスタマージャーニー)の一部を見て頂きましょう。
まずは、80歳の母親が京都の神社巡りに車椅子でお出かけしたいと言ったことがきっかけでAさんは夫と相談したり「車椅子 京都」などのキーワードでGoogle検索します。
次に、「車椅子 レンタル 大阪」や「車椅子 レンタル 1日」などのキーワードで再度Google検索します。
車椅子を大阪(地元)で短期レンタルしたいからですね。
そこから介護レンタル系サービスの会社を数社リストアップしてA社のみに絞り込みます。
そして、A社に電話で不明点などを電話で問い合わせし初回お試し申込みをします。
最後に初回お試しで満足したので実際に正式利用するというのが大まかな流れになります。
<考察>
仮説構築
「車椅子/福祉車両レンタルでは平日のほうがCVsを獲得できるのではないか?」
(※CVs=コンバージョンとはWEBサイトを訪問したユーザーが問い合わせなど成果に繋がるアクションをすること)
車椅子や福祉車両をどのような時にレンタルするかを弊社で独自にリサーチしたところ、旅行やお出かけでのご利用が多そうだということがわかりました。
そこで休日にお出かけをするために平日に利用されるのではないかと考えました。
そのデータの裏付けを得るために検証のリサーチを開始致しました。
検証(データの集計と分析)
相関比
まずは、曜日とCVs(コンバージョン数)の相関関係についてリサーチ致しました。
今回は、曜日(質的データ)とCVs(量的データ)の掛け合わせなので相関比を算出します。
まずはある期間内の曜日ごとの成果レポートからデータを集計し曜日単位でカテゴライズします。曜日ごとの平均値や偏差などを算出しておきます。その後に相関比を算出するという流れになります。
相関比の算出方法は以下の通りです。
相関比=グループ間平方和 ÷ 全体の偏差平方和
福祉車両の例ですと、
グループ間平方和:22.68
全体の偏差平方和:128.18
なので、
相関比≒0.18となりました。
相関比の値の解釈は、以下のようになります。
0≦相関比≦0.1→相関なし
0.1<相関比≦0.25→相関あり
0.25<相関比≦1:強い相関あり
ゆえに、福祉車両のレンタルの曜日とCVs(コンバージョン数)には相関関係があるといえることになります。
有意差
では次は平日と休日の統計データを集計していきましょう。
<車椅子の平日と休日の各指標の統計データ>
車椅子で連休を除く約半年くらいの期間でデータ集計しております。
(CVs(コンバージョン数)については平均値を1.0としたときの相対値での表記となります。)
上記の結果から平日のほうが休日よりCVR(コンバージョン率)が高いことがわかりました。
しかし、この結果は偶然かもしれませんよね。
別の期間で集計したら結果は変わるかもしれません。
そこで、有意差検定の出番となります。
この結果が偶然起きた結果なのかを調べることができるのです。
有意差検定のツールで計算すると、
統計量Z=1.66という結果になり95%信頼区間に入るため有意差があるとわかりました。
(※95%信頼区間とは今回のような同じデータ分析を100回繰り返したときに95回はこの区間内に結果が収まる範囲のことです。)
まとめると、車椅子系では平日より休日のほうがCVRが高いといえます。
ちなみに、福祉車両系でも同様に平日のほうが成果が良いという結果になりました。
曜日別のデータ集計結果
<車椅子の曜日別の各指標の統計データ>
車椅子では火曜日が最もCVs(コンバージョン数)が多いという結果になりました。
(CVs(コンバージョン数)については平均値を1.0としたときの相対値での表記となります。)
CVR(コンバージョン率)が高いため、CPA(顧客獲得単価)も最も抑制できております。
<福祉車両の曜日別の各指標の統計データ>
福祉車両では金曜日が最もCVs(コンバージョン数)が多いという結果になりました。
(CVs(コンバージョン数)については平均値を1.0としたときの相対値での表記となります。)
CVR(コンバージョン率)が高いため、CPA(顧客獲得単価)も最も抑制できております。
つまり、車椅子では火曜日、福祉車両では金曜日が最も成果がよく、コンバージョンを獲得できていることがわかりました。
検証結果
仮説:「車椅子/福祉車両レンタルでは平日のほうがCVsを獲得できるのではないか?」
検証結果:介護レンタルサービスでは平日のほうが休日よりCVsを獲得できております。
車椅子では火曜日、福祉車両では金曜日が最もCVRが高いという結果となりました。
<改善提案>
仮説構築と検証結果を踏まえて以下の施策を実施させて頂くことを提案致しました。
入札戦略:「クリック数の最大化」から「コンバージョン数の最大化」への切り替えです。
(※「クリック数の最大化」は手動入札、「コンバージョン数の最大化」は自動入札です。)
本来ならキャンペーンを分割し入札単価の調整を図りたいところですが、予算の都合上キャンペーンを分割することができませんでした。
そこで自動入札に切り替えることで車椅子と福祉車両における曜日単位での最適な入札価格の調整が促進されると思われます。
自動入札の場合は、AIが自動で入札価格を調整することでオークション毎に最適な入札価格を提示することが可能です。
・車椅子系では火曜日の入札価格調整比率を上げる
・福祉車両系では金曜日の入札価格調整比率を上げる
といったことも期待できます。
<施策実施結果>
入札戦略を「クリック数の最大化」から「コンバージョン数の最大化」に切り替えた前後の期間でパフォーマンスを比較した結果は以下の通りです。
CTRはやや下がりましたがCPAを半分程度に抑制しCVsを2倍程度に増加できております。
<まとめ>
今回は、介護レンタルサービスに関する案件での統計を活用した広告効果の改善事例についてご紹介させて頂きました。
まずは以下の仮説を構築するところからスタートしました。
「車椅子/福祉車両レンタルでは平日のほうがCVを獲得できるのではないか?」
土日のお出かけ需要があるため平日にレンタルを検討するのでないかということですね。
そこから必要なデータを分析し「相関比」や「有意差」を算出しました。
検証結果としては、介護レンタルサービスでは平日のほうが休日よりCVsを獲得できることがわかりました。さらに、車椅子系では火曜日、福祉車両系では金曜日が最もCVRが高くなることがわかりました。
そこから入札戦略を「クリック数の最大化」から「コンバージョン数の最大化」に切り替えることと致しました。
施策実施結果としては、CPAを半分程度に抑制し2倍のCVsを獲得することができました。
このような仮説思考はマーケティングにおいて非常に重要です。
是非参考にして頂けると幸いです。