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2019.5.17

「CVRの低下が要因です」で終わらせないための15の視点

「CVRの低下が要因です」で終わらせないための15の視点

みなさん、GWはいかがお過ごしでしたでしょうか。

今年のGW10連休の中、令和への改元もあり、さながらお正月のような賑やかささえ感じさせました。

生前退位でなければ、なかなかこのようなムードは生まれなかったのではとは思いますが、日本人は(人間は?)何かにつけてお祭りが好きな人種なのだな、と改めて実感した次第です。

 

さて、別の投稿でもインタビュー記事をアップしましたが、当社にも新卒社員が入社しました。

 

彼には今後、広告運用担当者としてSTORY流の戦略の立て方、マーケティング戦術への落とし込み方法をみっちりと学んでもらい、クライアント様の成果創出に貢献してもらう予定ですが、良い機会ですのでこれからぶち当たるであろう「壁」の乗り越え方のヒントを備忘録として残しておきたいと思います。

同じようにこの春からデジタル広告の運用担当として配属された方々にとって、少しでも良い気付きとなれば幸いです。

 

「CVR(コンバージョン率)の低下が原因です」という前にー

 

デジタル広告の世界では、月単位、場合によっては週単位で広告の成果をレポーティングし、次の成長につなげるための分析・考察をしてアクションプランをご提案していくわけですが、必ずしもいつも満足のいく成果が得られる訳ではありません。

 

当然、その現実と目標とのギャップが「伸びしろ」となり、そこを埋めていくことが当社のようなパートナーの付加価値となるわけですが、多くの広告代理店のレポートで散見される考察が「先月は○○という媒体でCVR(コンバージョン率、成果獲得率)が低下し、獲得数が伸び悩みました」という記述です。

 

この表現を見るたびに僕は溜息が漏れるわけですが、厳しい言い方をすると、これはもう考察でも何でもなく、ただの「事象の報告」ですよね。

 

一応CVR低下の理由についてもお茶濁し程度に併記されていることがありますが、その理由も

  • ユーザーモチベーションが低下しているようです
  • 季節要因と考えられます
  • クリエイティブの継続利用に伴う摩耗です

といった納得性と具体性のないものが大半、という悲しい現実。。

 

確かにそうなのかもしれませんが、もっとその要因を深掘りして突き詰めて考えていくことで、次に大きく飛躍できるヒントが隠されているとしたら・・・ここで終わらせてしまうのは非常に勿体ないと思いませんか?

 

ここでは、その結論で終わらせないための、15の視点をあげていきたいと思います。

 

要因分析に役立つ15の視点

 

  1. 実際の検索クエリを確認する
  2. 時系列で見る、過去と比較する
  3. Googleトレンド、SNSなどで世の中の流れを見る
  4. 競合を見る
  5. デバイスで見る
  6. 地域で見る
  7. 時間帯で見る
  8. 直帰率で見る
  9. 滞在時間で見る
  10. 読了率で見る
  11. ユーザーの行動経路で見る
  12. 視覚的な変化を起こす
  13. 実成果の変化を確認する
  14. 周りに意見を求める
  15. 本当の目的は何なのか確認し、手を打つ

1.実際の検索クエリを確認する

特にGoogleYahoo!の検索連動広告でのCVR低下分析においては、まず、実際のユーザーの検索クエリの中で、どの検索キーワードでCVRが低下しているのかを見極めるのが基本です。

ここで気をつけるべきことは、登録しているキーワードではなく、実際の検索クエリをしっかり見る、ということです。

例えば、前の月は登録しているキーワードの部分一致の拡張で○○という検索クエリが拾えており、そのキーワードでコンバージョンしていたものが、当月は入札やマッチタイプの変更、広告文とのマッチングなどの理由で、その検索クエリで広告が表示されなくなっていた、という事がよくあります。

その場合は、確実にそのクエリで広告が表示されるよう、完全一致でキーワードを登録しておく、そのクエリに関連する広告文を追加しておく、などのアクションが考えられます。

 

2.時系列で見る、過去と比較する

全く同じキーワードやターゲット、広告でCVRが低下している場合、季節要因も確かに考える必要があります。

直近1ヶ月だけでなく、年間を通してのインプレッション数やCVRの推移を確認し、前年や一昨年と比較してどうだったのかを「引きの視点」で見てみましょう。

毎年、同じ時期にCVRが低下しているようであれば、何かしらその時期にユーザーが行動しにくい理由が隠れている可能性があります。

 

3.Googleトレンド、SNSなどで世の中の流れを見る

上記の季節要因を検証するために、まずはそのワードをGoogleトレンドhttps://trends.google.co.jp/trends/?geo=JP)にかけて、世の中全体の検索需要の変化をチェックしましょう。

その時、単に直近1年間を見るだけでなく、過去5年間や10年以上前からの推移を確認することで、ようやく気づけることもあります。

 

たとえば「化粧ポーチ」の場合、直近1年間では大きな変動は無いようですが、

2004年からの結果を見ると、明らかに12月と3月にピークがあり、季節性があることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

また、5年ほど前から需要は伸びてきていますが、この1,2年間で頭打ちになっている様子も伺えます。

 

ただこれは検索需要、インプレッションに関わる部分ですので、CVRの低下とは少し観点が異なるかもしれません。

 

検索はされるもののコンバージョンに至らない、ということはユーザーが他の選択肢(つまり競合商品)を選んでしまった、という可能性もあるわけです。

 

実際にtwitterやインスタグラムなどで検索してみて、世の中のトレンドや競合他社の動きに変化はないかどうか、を確認しておきましょう。

 

Yahoo!リアルタイム検索(https://search.yahoo.co.jp/realtime)を使うと、ツイートの盛り上がりなども確認できますので便利です。

なにやら5/4付近で「化粧ポーチ」のつぶやきがスパイク(突発的に急増)していますね。

調べてみると、とある企業が「令和最初の試作品プレゼント」と銘打って、Twitter上でプレゼント企画のプロモーションをしているようでした。

もしかするとそちらにユーザーが魅力を感じて流れてしまっていたのかもしれませんね。

 

4.競合を見る

上記の様に、SNSから競合企業の動きを見ることも大切ですが、検索結果画面での競合企業の動きも確認しておきましょう。

Google広告にはオークション分析という機能があり、登録しているワードに対して他社の広告がどれくらい表示されているのかを確認できるようになっています。

競合他社が前月に比べて上位表示率が異常に高くなっている、というような場合、何らかのキャンペーンを打って入札を強化してきている可能性もあります。

実際にいくつかのワードで検索してみて、他社がどのような広告文を出しているかや、競合他社のサイトの内容、自然検索順位などを確認してみましょう。

実は他社が、自分のサイトの自然検索の順位が落ち込んで来たためにリスティング広告を強化している、という事もあったりします。

マーケットにはユーザーと自社だけではなく、当然ながら競争相手がいます。

その競争相手と同じ土俵で戦うのか、土俵を移すのか、戦うのであればどのような武器が必要なのか改めて考えてみましょう。

 

5.デバイスで見る

これも基礎的なチェックポイントです。

普段、PCだけでクライアント様のサイトを確認したりしていないでしょうか?

スマホでのCVRが著しく落ちている場合、何らかのサイト修正の不具合でスマホのページ読み込み速度が遅く、離脱してしまっている、ということもあるかもしれません。

数字を確認したら、実際に手元のスマホでチェックしてみて、どこかに不具合はないか確認するようにしましょう。

 

6.地域で見る

特定の地域での反応率(CVR)が悪い場合、その地域での他媒体の展開に何か変化がなかったか確認しましょう。

例えば地方新聞広告の効果が悪かったため出稿をやめた、などの事情があるかもしれません。

広告効果はWEBだけで完結するものではなく、多種多様なユーザーへの接触ポイントの積み重ねで変わってきます。

自分たちの仕事はWEB広告だ、と限定するのではなくクライアント様事業のパートナーとして視野を広げてコミュニケーションしていくと、違った世界が見えてくるかもしれません。

 

7.時間帯で見る

多くの媒体では日別のデータだけでなく、時間帯別での成果確認もできるようになっています。

基本的なことですが、ユーザーがコンバージョンしやすい夜間の時間帯に広告の一日に割り当てる予算が不足してしまい、そもそも表示できていなかった、といった機会損失が無いようにしておきましょう。

どうしても予算が足りないようであれば、そもそも狙っているターゲットが広すぎるのかもしれません。

もっとコンバージョンする可能性が高いユーザーに絞り込んで、そのユーザーの行動するタイミングで機会損失しないよう調整する、といった調整を検討してみてはいかがでしょうか。

 

また、特定の職種の方、例えば歯科医の方などは昼の休憩時間や平日の休みの時期に行動される傾向が強い、等が見て取れるようであれば、その時間帯に集中して配信する方が良いでしょう。

 

どんな人がどのような環境で広告に接触しているのか、想像力を膨らませて仮説を立てましょう。

 

8.直帰率で見る

ここからはGoogleアナリティクス等のサイト内分析ツールを併用して、広告をクリックしたユーザーのその後、を見ていきましょう。

Google広告であれば、Googleアナリティクスとアカウントを紐付けておくことで、Google広告の管理画面上でもかなり手軽にユーザー行動を確認できるようになってきました。

キーワードごとのインプレッション、クリック、コンバージョンだけなく、直帰率を横並びで見ることで、それぞれの検索意図に対してユーザーを満足させられているかどうか、ざっくりとした判断材料として使うことができます。

また、この直帰率と各キーワードの品質スコア(あくまで管理画面上に表示されている目安の指標ですが)は密接に関連しているようです。

当社の実験では、キーワードごとのクリック率よりも直帰率の方が、品質スコアとの相関が強いことがわかっています。

直帰率が相対的に高いキーワードについては、ユーザーが期待していたものがそのサイトにはなかった、ということですので、求めているコンテンツを追加する事や商品自体の改良、もしくは逆にキーワードを絞り込んだり、広告文でより明確に商品・サービス内容を説明しておくことで誤解を与えないようにする、等の対策が考えられます。

 

9.滞在時間で見る

滞在時間もユーザーの気持ちを推測する一つのバロメーターです。

サイト全体の滞在時間というよりも、CVRが落ちる原因となったキーワード×ランディングページでの滞在時間の変化を直帰率と併せて探りましょう。

滞在時間が1,2秒であれば、そもそもユーザーが期待していたコンテンツとはじめから異なっていた可能性が高いため、ターゲティング自体が適切でない恐れがあります。

数秒読んで離脱しているようであれば、コンテンツの途中で何かしらユーザーのモチベーションを削いでしまうボトルネックがあるか、商品やオファー、記事の面白さ自体の魅力が足りないのかもしれません。

 

10.読了率で見る

Googleタグマネージャーを利用し、スクロール深度によってGoogleアナリティクスのイベントタグを発火させることにより、Googleアナリティクスでもどこまでページをスクロールしてコンテンツが読まれたかを把握することができるようになります。

(詳細設定についてご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください)

対象とするページの滞在時間が短かった場合、この読了率を確認することでページ内のどの部分でユーザーが興味を無くしてしまったのかを分析することができ、より改善のためのアクション案が立てやすくなります。

Sitesthttps://sitest.jp )やPTengine(https://www.ptengine.jp)、MIERUCAhttps://mieru-ca.com/heatmap/)のようなヒートマップツールを活用して細かにユーザーがコンテンツのどの部分を興味を持って読んでいるのかなどを確認することも良いヒントになるでしょう。

 

11.ユーザーの行動経路で見る

Googleアナリティクスには、行動フローというユーザーがサイトに訪れてからどのようにサイト内を遷移したのかを視覚化するレポートが用意されています。

さらにコンバージョンに至ったユーザーに限定してこの行動フローも確認することができますので、コンバージョンに至ったユーザーと至らなかったユーザーの差異を観察することによって、ボトルネックが見つかることもあります。

 

また、データだけでなく、自分がまっさらな気持ちになってユーザーの行動を追体験してみるのも有効です。

ただ、一度商品やクライアント様のことを深くまで知ってしまうと、どうしても初心に戻ることは難しいものです。

その時にはクライアント様のターゲットに近しい同僚や友人に頼んで、代わりにその気持になって操作してもらうのを側で観察する、という方法も考えられるでしょう。

 

その自分自身、もしくは人の行動を観察しながら、どこで躓いてしまうのか、どこで悩みを抱くのかなど心の動きを観察しましょう。

 

もしクライアント様が実店舗でもビジネスを展開しているようであれば、その現場も是非見に行ってみてください。

お店の前を行き交う人達はどんな人か、周りに競合になり得る店舗はあるか、お店の雰囲気はどんなイメージを抱かせるのか、など、ネットだけでは分かり得ない大きなヒントが潜んでいるかもしれません。

 

12.視覚的な変化を起こす

ここまで、色々な角度から情報を集めてきましたが、それでもなかなかヒントが浮かばない場合、データ自体の「見え方」を工夫することで発見が得られるかもしれません。

たとえば数字の羅列をグラフ化してみるだけでも、新たな傾向が見えてきたりします。

最近ではGoogleデータポータル(https://datastudio.google.com/ )などを使えば、GoogleアナリティクスやGoogle広告などのデータは瞬時に様々なグラフに加工できますので、もしまだ使われた事がないようであれば是非触ってみてください。

 

その他、一部紙にプリントアウトしてアイデアをメモしながら分析してみたり、環境を変えてリフレッシュしてから見つめ直すと新たなヒントが得られる場合もあります。

 

13.実成果の変化を確認する

これは根本的な確認ポイントです。

昨今のWEBマーケティングツールの進化により、あたかも全てのデータがWEBでは可視化されているように思われがちな部分もありますが、実際にはまだまだWEB上で観測できるユーザー行動は氷山の一角といって良いでしょう。

さらに最近ではAppleITPIntelligent Tracking Prevention)と呼ばれる、safariブラウザ上でのトラッキング防止機能が大幅に機能強化されており、簡単にはユーザー行動がアクセス解析等で計測しづらくなってきている状況です。

 

そんなとき、広告媒体やアクセス解析ツールのコンバージョン数値を鵜呑みにするのではなく、きちんと実際のクライアント様側での実売上・実成果がどうなっているのかを確認しておくことは非常に重要です。

 

場合によってはクライアント様側でしか持ち得ていない情報もあったりします。

(将来販売を停止するかもしれない商品があり、積極的に在庫を確保しないようにしている、等)

 

データだけに固執するのではなく、しっかりとクライアント様とコミュニケーションを取ることは、決して欠かしてはならない姿勢と言えるでしょう。

 

14.周りに意見を求める

人間一人で思いつく解決策には限界があります。

案件で関わる営業担当はもちろんのこと、普段業務で直接は関わらない人からも意見を求めることで、視野が広がります。(ただし、機密情報も含まれることがほとんどですので社内規定やクライアント様とのNDAに則り、情報の取り扱いには注意しましょう)

 

15.本当の目的は何なのか確認し、手を打つ

ここまでぐっと色々な角度からCVR低下の要因を深掘りしてきましたが、そもそもCVRが下がる事自体が本当に問題なのか、一度初心に立ち戻って考えてみることも大切です。

 

クライアント様の状況によっては、CVRが下がっても、もしくは獲得単価が上がったとしても、ビジネス全体を通して考えたときに「今、この時期に」とにかくコンバージョンの母数を確保することが至上命題である場合もあります。

 

その場合はCVRの改善に全力を傾けて1割改善するよりも、CVRを維持しながらサイト流入数を3割増やしたほうが、結果的にクライアント様の為になるかもしれません。

CVRは一つのKPIにしか過ぎないことを心にとめ、常に本当の目的は何か?そのための最善の施策は何なのかを考えていくようにしましょう。

 

以上、長文になってしまいましたが、何かヒントになりそうなものはありましたでしょうか?

結局、クライアント様の成果達成のためには、いかに目の前のビジネスを自分ごと化して捉え、本気でデータ・ユーザー・クライアント様と向き合えるのか、が良い運用担当者かどうかの分かれ目となるのではないかと思っています。

(もちろん知識は知識で重要なので、きちんと勉強もしていきましょう!)

 

これをご覧になっている皆様が、少しでも新たな気付きを得て、それぞれのステージで成果を創出する一助となれば幸いです。

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